ブラジルから、あなたの音楽を聴いている一人のファンとして。
『Made of Glass』について書く前に、どうしても伝えたかったことがあります。
私にとって、あなたの音楽は「聴くもの」というだけではありません。
時々、それは言葉にできなかった感情に、代わりに名前をつけてくれるものです。
だから、この文章はアルバムを評価するためのレビューではありません。
私があなたの音楽を聴いて、何を感じ、何を受け取ったのか。
その一つの記録です。
『Made of Glass』という名前を知ったとき、私は思いました。
**「壊れないことではなく、壊れうる自分のまま光を映すことなのかもしれない」**と。
そして、その考えがとても美しいと思いました。
Made of Glass』について語るためには、まずmiletについて語らなければならない。
そして、彼女のようなアーティストを紹介することは、おそらく簡単ではない。
なぜなら、miletという存在は、ただ「歌う人」として説明するには、あまりにもその声が私たちの中に残るからだ。
miletは、2018年に音楽活動を開始し、2019年にEP『inside you』で大きな注目を集めた日本のシンガーソングライターだ。翌年には自身初のスタジオアルバム『eyes』をリリースし、オリコン週間アルバムランキング、Billboard JAPANのアルバムチャートで1位を獲得した。
けれど、miletというアーティストを、アルバムの成功だけで語ってしまうのは、あまりにも惜しい。
彼女の歌声は、日本の音楽シーンの中で、とても特別な場所を築いてきた。
親密さと、映画のような壮大さのあいだ。
彼女はアニメ、映画、ドラマなどの作品に楽曲を提供することでも知られている。そして彼女の歌は、時にその作品そのものを越えて、ひとつの物語として私たちの心に残る。
たとえば、『葬送のフリーレン』のエンディングテーマとなった**「Anytime Anywhere」**。
この曲は、限られた数分間の中で、距離、記憶、別れ、そして愛する人がいなくなった後も残り続けるものを描き、多くの人の心に強く刻まれた。
そして2026年、彼女は再び『葬送のフリーレン』の世界へ戻ってきた。
第2期エンディングテーマとして届けられたのが、**「The Story of Us」**だ。
そして、そこにこそmiletの魅力があるのかもしれない。
彼女は、感情について歌っているというより、
まるでその感情の中に身を置きながら歌っている。
彼女の歌には、壊れそうなほどの繊細さと、それに反するような強さが同時に存在している。
大きな会場を満たすほど力強いのに、同時に、誰もいない部屋でひとり音楽を聴いている誰かに向けて、直接語りかけているようにも聞こえる。
彼女の音楽は、簡単には整理できない感情の間を行き来する。
恋しさ。
愛。
恐れ。
孤独。
希望。
別れ。
そして、心のどこかではまだその場所に留まっていたいと思いながら、それでも前へ進もうとする、あの不思議な気持ち。
そして『eyes』『visions』『5am』を経て、miletは今、新たな章へと進もうとしている。
約3年ぶりとなる4枚目のスタジオアルバム、
『Made of Glass』。
リリース日は、2026年8月19日。
そして、ここからがさらに興味深い。
なぜなら、miletがこの新しい章につけた名前は、
「Made of Glass」――「ガラスでできている」
だからだ。
本人が語るように、この「ガラス」は、透明で光を受けることができる一方で、鋭く、繊細で、壊れやすいものでもある。
たとえ自分が脆くても、光を反射し続けたい。
そして、自分のひび割れや傷さえも、音楽へと変えていきたい。
そんな思いが、このタイトルには込められている。
だからこそ、『Made of Glass』は少しずつその意味を持ちはじめる。
これは、
「もう壊れなくなった人」のアルバムではない。
むしろ、
「壊れてしまう自分でも、光を映し続けられる」と知った人のアルバムなのだ。
壊れることと、強くあること
miletの歩みの中で特に興味深いのは、彼女が一度も、
「強く見えること」と「脆さを認めること」
のどちらかを選ぶ必要がなかったことだ。
『inside you』の頃から、彼女の歌声はその矛盾した場所に存在しているように感じる。
重さがある。
影がある。
身体にまとわりつくような melancholia がある。
それでも同時に、独特の光が存在する。
miletは夜を知っている人のように歌う。
けれど、必ずしもその夜に留まりたい人として歌っているわけではない。
だからこそ、
『Made of Glass』というタイトルは、これほどまでに正確なのだと思う。
ガラスは強さを持っている。
けれど、壊れることもある。
透明でありながら、向こう側の景色をそのまま映すとは限らない。
繊細でありながら、鋭く人を傷つけることもできる。
そんな相反する性質が、アルバム全体を通して流れているように感じられる。
約3年ぶりに届けられる『Made of Glass』は、全16曲で構成され、これまでに発表された楽曲と新録曲を含む作品となっている。
収録されるのは、
Hurricane
Golden Ember
The Story of Us
Sunny
I still
Wings
hanataba
Bluer
海原
Anytime Anywhere
hanare banare
Happily
Higher
Masterpiece
Christmas Eve
Perfect blue
――全16曲。
そして何より興味深いのは、
これらの楽曲が、どのように互いに語り合っているように感じられるか
ということだ。
アルバムは、嵐から始まる
アルバムの幕を開けるのは、
「Hurricane」。
私は、この選択がとても象徴的だと思う。
ハリケーンは、単なる破壊ではない。
それは、動きだ。
突然やってきて、周囲のすべてを巻き込み、景色を変えてしまうもの。
これほど長いアルバム間の時間を経て、『Made of Glass』を「Hurricane」で始めることは、まるでこんな宣言のようにも聞こえる。
「私は戻ってきた。でも、ここを去ったときと同じ私ではない。」
そして続くのが、
「Golden Ember」。
もし「Hurricane」がすべてをかき乱す力だとしたら、「Golden Ember」は、炎が消えた後にも残っているもの――
消えない火種。
巨大な炎ではない。
すべてが終わったように見える場所で、それでもまだ温かさを残しているもの。
この2曲の並びだけでも、『Made of Glass』には、
破壊と、その後に残るもの
という美しい緊張感が生まれている。
「The Story of Us」:おそらくアルバムの感情的な中心
そして3曲目に置かれているのが、
「The Story of Us」。
『葬送のフリーレン』第2期のエンディングテーマとして届けられたこの曲は、アルバムという文脈の中に置かれることで、さらに大きな意味を持つ。
この曲が語っているのは、単なる恋愛の物語だけではないように思う。
それは、
時間が過ぎた後も、二人がお互いの中に何を残していくのか。
という問いなのではないだろうか。
そして、それはmilet自身の歩みとも美しく重なっている。
長い年月。
数えきれないほどの楽曲。
アニメ、映画、ドラマ。
彼女の声を通して私たちのもとへ届けられてきた、たくさんの物語。
そのすべてを経て、miletは今、
「そして、私たちの物語は?」
と問いかけているようにも感じられる。
アーティストとリスナー。
過去と現在。
そして、かつてのmiletと、今のmilet。
そして「Sunny」がやってくる
「The Story of Us」が、残されたものを見つめる曲だとすれば、
「Sunny」は、始まっていくものを見つめる曲だ。
『ふつつかな悪女ではございますが ~雛宮蝶鼠取替伝~』のオープニングテーマとして届けられたこの曲は、アルバムに新しい風を吹き込んでいる。
そして、ここには少し素敵な皮肉がある。
『Made of Glass』というアルバムの中に、「Sunny」という曲が存在すること。
ガラスは、光を受けることで、その美しさを見せる。
光を反射し、通し、時には屈折させ、そこに新しい色を生み出す。
だから「Sunny」は、アルバムの中で、
光が、脆い人間を通り抜けていく瞬間
なのかもしれない。
それは、何も知らない人の無邪気な幸福ではない。
暗闇を知った人が、それでも光を見つけようとすること。
そんな明るさなのだと思う。
「I still」:手放せないものの、その先へ
続くのは、映画『知らないカノジョ』の主題歌、
「I still」。
そして、これほどシンプルでありながら、これほど胸を締めつける言葉もない。
I still.
私は、まだ。
まだ感じている。
まだ覚えている。
まだ愛している。
まだ痛い。
まだ、ここにいる。
この曲の強さは、むしろ「言われていないこと」にある。
私たちの人生の中には、誰かが去った瞬間に終わるわけではない物語がある。
その人がいなくなった後も、
その物語は私たちの中で続いていく。
そして、それこそがmiletの音楽の魅力でもある。
彼女は痛みを大げさなものにはしない。
ただ、
そこにあることを許している。
「Wings」:重さを抱えたまま飛ぶということ
**「Wings」**も、このアルバムの中に置かれている。
出光興産のキャンペーンソングとして使用されたこの曲。
「Wings」という言葉を聞くと、私たちはすぐに「自由」や「飛翔」を思い浮かべる。
けれど、翼は必ずしも「逃げること」を意味するわけではない。
時には、
自分自身の重さを、以前とは違う方法で抱えることを覚えるためのもの
なのかもしれない。
飛びたいと思うとき、私たちが本当に望んでいるのは、空へ逃げることではなく、
「もう、こんなにも縛られていると感じたくない」
ということなのかもしれない。
そして、それもまた『Made of Glass』が繰り返し描いているテーマのひとつだ。
壊れない人間になることではない。
壊れる可能性を知ったまま、それでも前へ進むこと。
「hanataba」:救えないものに捧げる花
そして、
「hanataba」。
miletの近年の楽曲の中でも、特に強い感情を持った一曲であり、ドラマ『アンチヒーロー』の主題歌としても知られている。
「hanataba」は、
花束という意味。
そして、この言葉にはとても深い美しさがある。
花束は、祝いのために贈られる。
けれど同時に、別れのためにも贈られる。
愛する人に手渡すこともできる。
そして、もうそこにいない誰かを想いながら、静かに捧げることもできる。
花束が美しいのは、
その美しさが永遠ではないからだ。
花はいずれ枯れる。
それでも私たちは花を贈る。
だからこそ、これはアルバム全体を象徴する、とても美しい比喩なのかもしれない。
いつか終わると知っているからといって、それが愛する価値のないものになるわけではない。
「Bluer」と「海原」:変化の場所としての海
続いて登場するのが、
「Bluer」。
そして、
「海原」。
ここでアルバムは、少しずつ呼吸を始めるように感じられる。
序盤の楽曲が、嵐、記憶、脆さを扱っていたとすれば、ここで現れる「海」は、
変化のための中間地点
のように見える。
海は、決して止まらない。
果てしなく続いているように見える。
何かを飲み込み、何かを返す。
足跡を消しながら、それでも永遠に存在し続ける。
だからこそ海は、
変わっていくことについてのアルバム
にとてもよく似合う。
「Anytime Anywhere」:アルバムを読み解く大きな鍵
そして、
「Anytime Anywhere」。
miletの近年のキャリアを語るうえで欠かすことのできない一曲であり、『葬送のフリーレン』第1期のエンディングテーマとして、多くの人に愛された楽曲だ。
この曲には、ずっと強いテーマが存在している。
距離が離れても、存在は消えない。
愛する人が、もう隣にいなくても。
その人と過ごした時間は、私たちの中に残り続ける。
そして、この曲がアルバムの10曲目に置かれていることも、とても興味深い。
最初でもない。
最後でもない。
真ん中にある。
まるでアルバムがこう語りかけているようだ。
「前へ進むためには、まず受け入れなければならない。
もう自分の人生にはいない人であっても、その人が自分の物語の一部であり続けることを。」
それは、とても『葬送のフリーレン』らしい考え方であり、
同時に、とても人間らしい考え方でもある。
そして、新しい物語へ
ここから『Made of Glass』は、さらに興味深くなっていく。
「hanare banare」
「Happily」
「Higher」
「Masterpiece」
「Christmas Eve」
「Perfect blue」
など、新たに届けられる楽曲たち。
私は、この構成がとても好きだ。
なぜなら、このアルバムを単なるシングルの集合体にしていないから。
アニメ。
映画。
ドラマ。
広告。
それぞれ異なる場所から生まれた楽曲たちを、
ひとつの物語として再び結び直す。
それが『Made of Glass』なのではないだろうか。
ここには、最初から最後まで一直線に進む物語があるわけではない。
その代わりに存在しているのは、
ひとつの感情の風景。
私が『Made of Glass』で最も惹かれるもの
『inside you』の頃のmiletは、
自分自身の中で迷い続けること
について歌っていたように感じる。
『5am』では、
夜という場所で、相反する感情を同時に抱えること
を見つめていたように思う。
そして今、『Made of Glass』にいるmiletから感じるのは、
いくつかの夜をすでに越えてきた人の姿
だ。
彼女は、
「私はもう脆くない」
と言っているようには見えない。
むしろ、
「私は脆いままでいい。脆いままでも、進んでいける。」
と言っているように感じる。
そして、それはとても大切なことだ。
私たちの社会は、レジリエンスという言葉に取りつかれている。
強くならなければいけない。
乗り越えなければいけない。
前へ進まなければいけない。
傷さえも、美しい物語に変えなければならない。
でも、
本当にそうなのだろうか。
まだ痛みが残っていてもいい。
まだ誰かが恋しくてもいい。
まだ怖くてもいい。
そして、
壊れる可能性を持ったまま、それでも立っていてもいい。
もし私たちがガラスでできていたとしても、
それでも生きていていい。
私が『Made of Glass』から感じるもの
『Made of Glass』は、「脆さ」についてのアルバムというより、「脆さを受け入れること」についてのアルバムなのだと思う。
終わるかもしれないと知りながら、それでも誰かを愛すること。
迷うかもしれないと知りながら、それでも歩き続けること。
自分自身を疑った後でも、それでも創り続けること。
すべてがいつか終わると知りながら、それでも今日を生きること。
そして、
何かが壊れる可能性を知っていても、それを愛すること。
だからこそ、「ガラス」というイメージは、これほどまでに美しい。
ガラスは、ただ壊れるものではない。
光を通すものでもある。
そして、もしかすると、ここにこそ、過去のmiletと現在のmiletの大きな違いがあるのかもしれない。
彼女は、もう自分の「ひび割れ」を隠そうとしていない。
むしろ、
そのひび割れを光が通ったとき、何が見えるのかを見ようとしている。
『Made of Glass』は、壊れることについてのアルバムではない
『Made of Glass』は、2026年8月19日の正式リリースを目前にしている。
そして、すでに届けられている楽曲たちが描き始めている物語を考えると、このアルバムはmiletのキャリアにおいて、とても興味深い一枚になるのではないかと思う。
でも、もしこのアルバムがタイトルに込められた意味を最後まで貫くのなら、
これはきっと、
「壊れること」についてのアルバムではない。
もっと静かで、もっと優しいものなのだと思う。
それは、
壊れてしまったものにも、まだ価値があると知ること。
壊れたからといって、捨てる必要はない。
傷ついたからといって、終わりではない。
ひびが入ったからといって、美しさが失われるわけでもない。
時には、ただそこに置いて、
光の前にかざしてみればいい。
そして、
そのひび割れを通して、どんな光が見えるのかを眺めてみる。
それが、
miletの『Made of Glass』なのかもしれない。
壊れることを恐れるのではなく、
壊れうる自分のままで、光を映し続けること。
それは、とても脆くて。
だからこそ、とても美しい。

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